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たわいも無い話をしながら学校へ歩を進めていく俺と美月。
最近はもっぱら【例の事件】についての話が多い。
「今日の朝のニュース見て驚いたけど、また事件が起こったよね」
「ああ、そうだな。しかも洛陽高校って隣の県だぜ?もしかしたら次の標的は星辰高校かもな!」
俺が冗談でそう言うと、美月がまた叩いてきた。
「縁起でもないこと言わないでよ!」
「じょ、冗談だって!本気にすんなよ」
俺の背中に暑さのせいか、美月への恐怖のせいか分からないが汗が滴り落ちた。
「…何で犯人捕まらないんだろうね。私、ちょっとだけ怖いな」
急に立ち止まり、声の調子を落としてそう言った美月。
いつも堂々としてる姿が小さく見えた。
「…心配すんなって、あんな事件俺たちには関係ねえよ。犯人もすぐ捕まる!」
俺は力強く言い切った。
「何で分かるの?」
俯いていた美月が顔を上げて聞いてきた。
美月のつり目がちな目と俺の視線が交差する。
「それは……根拠は無い!勘!!」
一瞬溜めた後言った俺の言葉を聞いた美月は、一瞬呆気に取られたような顔をした後、いつもの笑顔に戻った。
「春希のバーカ、あんたの勘なんて当たったためしないんだから」
「うっせえ!だいたいお前が暗くなるなんて柄じゃねえだろ?」
「…それもそうだね」
美月はもう暗い顔なんてしてなかった。
いつもの表情。
「早く行くぞ!」
俺たちは目前まで迫った星辰高校へまた歩き出した。
(何で分かるの?っていわれてもな…俺もそんな事件関係無いって思わないとやってられないんだよ。
そう思わないと…)
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