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僕は窓から流れていく外の景色を見ていた。
背の高いビルや忙しく歩く人々、それから有名ブランドショップやブティックまで……
こんな都会、心踊らないわけがない。
あぁ……ビバ都会
「……い、おい!! 着いたぞ」
氷昼さんの声で僕は目を覚ます。
無理な体勢で寝ていたのだろうか、少し体の節々が痛んだ。
周りを見渡すとそこに広がっていた景色は、田んぼと畑と背の低い民家、それからこの辺に住んでいるであろう子供たちだった。
あれ、都会は……時間が経つにつれ記憶が戻ってきた。
そう、僕たちはあのあとタクシーに乗ったんだ。
途中から僕は寝てしまったため、記憶がないということらしい。
「もうすぐ着くから、目は覚ましておけ」
氷昼さんは相変わらず、腕を組み窓の外を物憂げに眺める姿勢を保っていた。
ていうか、田舎を物憂げに眺めるとまるでここの住民でここを出ていく人みたいに……見えねぇな。
うん、氷昼さんは氷昼さんだ。
「それで、僕たちはどこに向かってるんですか?」
行先は聞いていたが一応確認のためにもう一度氷昼さんに確認しておこう。
「……この先の港、つっても漁村の海岸沿いだけどな、に船が一艘停泊しているからそれに乗って離島に向かう」
若干間が空いたその時に睨まれた気がしたけど気にしないでおこう、怖いから。
とりあえず、僕たちが向かっているのは港(漁村の海岸沿いと言ってたけど)らしい。
船に乗るのはこれが初なので少し期待しておこう。
とか、考えている間に船が見えたのか氷昼さんが運転手さんに何かを伝えている。
そして、少し走ったところでタクシーは止まった。
僕は外に出てタクシーのトランクにしまった荷物を出す。
その間氷昼さんは精算を済ませていた。
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