8人が本棚に入れています
本棚に追加
二十分も歩いただろうか、島の景色は変わらずまるで同じ場所を歩いているみたいだった。
いや、たぶんそれは錯覚だろう。
島に入ったらすぐに周りは林に覆われた砂利道になった。
よく人が出入りするのだろうか、道自体は草も生えずよくならされている。
所々、大きめの石がありその辺りまで手入れをされているというわけではなさそうだ。
走ったりするのに向いてなさそうな道で、トランクを引く身としてはとてもめんどくさい。
はぁ、しかし遠いな。
若干の坂道となっているのだろうか、トランクを引く手が少し疲れてきた。
周囲の林……もう森と言っても差し支えないほど鬱蒼とした景色が僕の心を癒すわけもなく、僕は氷昼さんに文句を言おうと前を歩く氷昼さんを見る。
「着いたか、俺をここまで歩かせるとは随分な待遇だ」
氷昼さんのその先には森の間にそびえると言ってもいいほどの建物が鎮座していた。
文句を言おうとしていた僕の口は間抜けなほどポカンと開いていた。
最初のコメントを投稿しよう!