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潮の香りがする。
風が、大地に向かい運んでくる、懐かしい香りが。
オイラは海に出なくてはならない。海へ、海へ―――何故・・・?
「ふざけないで欲しいですねッ!!」
右腹に鈍痛。
「ちょっと!顔とお腹はダメよ、一応女の子なんだから!他を狙いなさい!」
背中に重圧。
「了解、副戦長ッ!喰らえやこのボケッ!!」
両の足に激痛。
痛む頭を庇いながらうずくまる、小さなオイラの上を、様々な怒声と罵声が飛び交った。
*
「やだぁ、服がボロボロじゃない!」
彼女――じゃなくて、彼はハスキーボイスでそう叫び、その長身を屈めてオイラの服についた土をはたいた。いやそれアンタらがやったんですよ、なんて怖くて言えない。
事後に怪我を心配してくれた彼は、マーガレットことマギー。本名は絶対嘘だと思う。強いて花に喩えるならば、サンフラワーがいいところだ。
マギーは近くで見ると、ほんとに体格がよくて、肌は程よく焼けて健康的、ウェーブのかかった長い金髪は、欝陶しそうだけど錦糸みたいに綺麗で、顔立ちも整ってる。所謂「美丈夫」ってやつだ。中身はアレだけど。アレだけど。
「着替えた方がいいわね。ほら、上着脱いで、両手挙げて」
まるで母親のように言う。岩の上に腰掛けたまま、素直に上着を脱いで万歳すると、ゴッ! という音がして、額に激痛が走った。
「少しは女としての危機感を持ちなさいよバカッ!」
「いったァ!?マジいったァアアアッ!?」
さっきの殴る蹴る(俗に言う集団リンチ)よりものすごく痛いんですけど!? 自分で顔とお腹はダメって言ってたじゃん……今の拳じゃん……。と言うか、この場における危機感って何。
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