改賊の記憶 第1章

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  「……聞こえてる」 素っ気なくて刺々しい声。 陰から姿を見せたのは、『立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花』という言葉をいくつ唱えても足りないような、美少年。 中央で分けられた黒髪は、短いけれど、一瞥するだけでその艶やかさが手に取るように分かってしまう。 肌の白さは正しく雪みたいだ。何で焼けないのか不思議なくらい。 声も唄うように綺麗だけど……口調はウィーズよりもぶっきらぼうで、男らしい。 切れ長の目は、彫刻のように整っていて近寄りがたい印象を受ける。 全体的に見て、性別込みでオイラの真逆な感じ。 「リータ、姫!何もたもたしてるの!」 ジャングルへの入り口で、やはり母親よろしくマギーが叫ぶ。 「ごめんなさいっ!えと、ひ」 「……とっとと行けよ」 眉間に皺を寄せオイラの言葉を遮り、吐き捨てるように一言。 ああ、ウザいって意味ですかそれ……分かったよ。 オイラは大きなバックパックを背負い、仕方なくマギーたちの後を追い始めた。こっそり振り返ると、『姫』は、オイラから距離を取りつつ、ゆっくりと後をついてきた。 オイラは、『姫』に嫌われてる。 いや、嫌われてしまった、というのが正しい。 いやいや、『姫』だけかというところも怪しい。 勿論、それは自業自得ってやつで。 なにせオイラは、彼を、彼等を――・・・ 仲間の顔を、忘れてしまったのだから。   →NEXT
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