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ある日、容子ママの客がアタシを場内指名した。
『愛子ちゃん、ちょっとこっちおいでぇ』
席につくとママが、
『須藤さん愛子ちゃんがお気に入りなんだってぇ。』
とママは優しい微笑みを投げた。
『いやぁねぇ、愛子ちゃんと前から話してみたかったんだよ』
と、身を乗り出しながら言う須藤。
『ちょっとごめんあそばせ、すぐ戻ってくるから愛子ちゃんの事いじめないで下さいねぇ』
と微笑みながら他のテーブルに付いた。
アタシの記憶が確かならば、須藤はたまにきてママとひっそり呑みママにいつも時計やネックレス、指輪などを『お土産』といって貢ぎひっそり帰る客。
ママに心底惚れたのだろう。
だけど須藤という名前以外は何の情報もない男。
何の仕事をしてるのか、独身なのかそうじゃないのか、どこに住んでいるのか全く不明なのだ。
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