出会い。

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彼と出会ったのは4年前。 銀座での生活も慣れてきた頃、お店のお姉さんである玲子に誘われとあるBARに行った。 『そこのマスターね、愛子ちゃん好みかもしれないわ。』 そう云うと玲子は煙草の煙をふぅーっとネオンが煌めく街に放ちた。 タクシーから降りて、5段くらいの階段を下り、モノトーンの扉を玲子が開けた。 『マスター!愛子ちゃん連れてきたわよ!』 そう言うと玲子はマスターに目配せをした。 『あー初めまして!やっぱ愛子ちゃん写真以上に可愛いねー』 どうやら仕組まれていたようだ。 アタシはというと、 彼を見た瞬間、何かに心をぎゅーっと掴まれ、息を思い切り吸っていた。吐き出すことができなくなった…。 運命かもしれない…アタシはそう思った。 一目惚れなんてゆうチープさは無く、そのたった一瞬で彼を愛してしまったのだ。 不思議な体験だった。 アタシはこの感情を見透かされないようにいつもの口調で云った。 『やだー玲子さん、どうゆうことですかー?』 彼から差し出されたおしぼりをサッと受け取った。 『いやぁ、マスターにね、愛子ちゃんと撮った写真を見せたら連れてこい連れてこいうるさいからさぁ。 でもなかなかいい男でしょ?』目尻を下げながら話す玲子。 『いやーでも本当に可愛いよ。愛子ちゃんファンのお客さんたくさんいるんじゃないの?』 彼も目尻を下げながら云った。 『いやぁ…ありがとうございます。 でも玲子さんに比べたらまだまだですよ』 アタシは口角を上げ話した。 アタシは見逃さなかった。 お絞りを差し出す左手の薬指に光るものがあった事を。 だけどアタシの心はそんな衝撃的事実を目の前に揺らぐ事はなかった。 いや、揺らぐ筈はなかった。 だって、一瞬で愛してしまったんだから……
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