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鎌田とアフターでいつものお寿司屋に行き、タクシーに乗った。
もらったマンションの住所を運転手に告げ、鍵を眺める…
お酒のせいで鍵が二重に見えたけど、
アタシの手の中にしっかり鍵はある。
18歳の春、故郷を出た時にはこんなアタシになっているなんて想像出来なかった。
だけど今はあの時のアタシではない。
昔のアタシはもう捨てたのだ。
マンションの前にタクシーが泊まった。
オートロックを解除し、最上階の18階へ……
鍵を鍵穴に入れ回すとガチャンと重い音がした。
ドアを開けるとふぁーっと新築の香りがした。
リビングに入り、窓からは銀座の街が一望できるほど素晴らしいものだった。
タバコに火をつけ思い切り煙を吸い込み目を瞑った。
あそこにベッドを置いて、テレビはそこ。テーブルはここでソファーはあっち。
そんな妄想が頭を巡った。
ついに、ここまできたのね。
アタシは銀座をまるで統一したようなそんな晴れ晴れしい気持ちになった。
バックから携帯を取り出し電話を掛けた。
『もしもし?アタシよ。今から会いたいわ。マスター愛してる』
マンションをくれた鎌田のことなんてもうすっかり忘れていた。
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