夜の蝶。

3/3
前へ
/88ページ
次へ
アタシの店は銀座の一等地にあり、 有名人や著名人の客も多い。 アタシがここで働きだしたのは18の時。 福岡が故郷のアタシは、両親の反対を押し切り上京してきた。 【東京には成功の種がゴロゴロ転がっている】 そう信じていたのだ。 上京して3日目。 初めて銀座に行った時のことだ。 ショーウィンドゥの中で綺麗な服を着せられたマネキンを眺めていると、 それに負けないくらい煌びやかな着物をきた女性がその店へ入っていった。 決して美人な顔立ちではないけれど華があり、何か物凄くキラキラとしたオーラの女性だった。 アタシはその魅力に一瞬で取り憑かれ、外から目でその女性を追った。 黒いスーツを着た女性店員が深々とその女性に頭を下げ、奥から大きい袋を渡した。 仕草、オーラ、何を取っても優雅で目を奪われ続けた。 その女性は店内を見回るわけでもなく、その袋を受け取ると首を横にしニコリと微笑み、店を出てきたのだ。 アタシはその女性から目を離すことができない。 魔法にかけられている、 そんな気分だった。 その女性は外にいたアタシに軽く微笑み会釈しネオン街へ消えた。 きっと水商売なのだろう… アタシもあんな風になりたい… そう思った。 上京して3日目、 その瞬間に道を決めた。 水商売で名を挙げ成功しようと決めたのだ。 その次の日、田舎から持ってきた一番高い服を着て、GUCCIのバックを持ち、 銀座へ行った。 そしてあの店の前をうろうろし、あの女性を探した。 だけど、何万といる中の1人を見つけるなど容易なことではない。 アタシはあの店の中へ入り、女性店員に昨日見たあの女性のことを尋ねてみた。 すると、 『あぁ!容子ママですね!容子ママのお店は2ブロック先にあるアイシャという店のママですよ。この時間ならもうお店に居るはずね』 そう聞くとすぐに店を後にし、そのアイシャという店を探した。 2ブロック先を曲がると雑居ビルの2階にアイシャとかかれた看板を見つけ出した。 高まる鼓動を抑えつけ、店の扉を開けた。 すると、あの女性が『いらっしゃいませ』 と少し首を傾げながら云った。 店にはまだ客はおらず綺麗に着飾った女性たちがいた。 アタシはその女性を真っ直ぐ見てこう云った。 『このお店で働かせてください!』 すると容子は微笑みながらこう云った。 『こっちにおいで。話聞くわ』
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加