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グランドの人混みを避けて通る。
ちらっと黄色い悲鳴の先を見れば、丁度合わさった気がした。
目が。
「ナイナイ」
ただでさえ地味な私があんな距離から見えたわけナイナイ。
目を反らしたそれでも、まだ刺さるように感じる視線から逃げるように私は、小走りでその場を立ち去った。
既に傾き始めている太陽が私の影を長く地面に移している。
影の私は縦に伸びているから、髪の毛まで少し伸びたように見える。
切ろうかな……
自分の中で決めていた“この長さから±五センチ”という髪の長さをゆうに越えていた。
明日はちょうど休みだから、切りに行こうかな……
毛先を指に巻き付けながら歩いていると、何かに足をとられて体制が崩れた。
「うわっ」
思わず目を閉じて衝撃をまつ。
しかし、私は地面よりも柔らかく、地面よりも冷たい何かに受け止められていた。
目をあけると、そこには蒼白な顔をした女性がいた。
髪の毛は腰まで伸びているのにツヤツヤで夕日のヒカリを反射している。
鼻もすっとしていてキレイだ。
思わず見とれていると私は彼女の上に乗ったままであることに、今更気付いた。
「あ、すみません。」
「いえ、大丈夫ですか?」
「……あ、はい……まぁ」
あれ?もしかして……
「すみません。僕がこんなところで座り込んだりしなければ……」
男!?
「あ、いいんです。それより大丈夫ですか?」
私の知っている男はこんなに綺麗ではない。
目を合わせられないまま、しどろもどろしていると、彼がクスっと笑った。
「あ、ごめんなさい。僕ちょっと貧血みたいで……よかったら助けて貰えますか?」
「え?あ、えっと、私の血を飲みます?ってそんな訳にはいかないか……」
「遠慮なく……」
「は?」
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