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「はぁ...」
これで何回目だろう。先程から、彼は窓の一点を見据えたまま、そこに座っている。そうして、何分かに一度、つまらなさそうに溜息をつくのだ。
「今日もまた雨、か。」
ここ数日、梅雨前線の影響で、天気は崩れたままである。
(道理で人が多いわけだ……)
彼は今、デパートのレストランにいる。ご飯時のせいもあるだろうが、やはり皆、雨の日に行く所などないのだ。友達と来ている者もいれば、家族連れで来ている人もいる。
「ねぇ、響。なに暗い顔してるの?」
彼の名は赤根空 響。今年で大学二年になる、どこにでもいる学生だ。
「聞こえてる?…もう、暗くて見えないのに外ばっかり見て。」
響は空模様を見るのが好きな、今では少し珍しい青年だ。
「……それよりさ、茉莉。これからどうする?」
響の目の前に座っているのは飯田 茉莉。響とは高校からの知り合いで、かれこれ三年近く付き合っている。
「外は雨が降ってるしねぇ。ううん…。とりあえずお店を見て回りたいな」
この時、家に帰っていれば、あんな思いをせずに済んだのだ。が、茉莉の一言で歯車が変わった。
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