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外で鳥の鳴く声が聞こえる…。
いつの間にか夜が明けてしまったのだろう。
またちゃんと眠れなかったな。
不眠症みたいなものなのか、時間が分からないからなのか…ここ最近眠った記憶がない。
でも眠気はない。
眠ってしまったら、また夢を見る。
覚めることのない悪夢から目覚めるには、起きておくしかないんだ。
カツン…カツン…
足音…看守のものだろうか。しかし朝食を持ってくるには少し早すぎる気がする。
鳥が鳴き始める頃に看守が来たことなど今までないのだ。
しかし足音は確実に私の牢へと向かっている…。
検討は…つく。
おそらく、私は外に出られるのだろう。
今日は晴れているだろうか、太陽は出ているだろうか、風は暖かいだろうか、景色はどんなだろうか、街は少しは変わっただろうか、子供たちはどれくらい大きくなっているだろうか…
ワクワクしてきた。
おかしいな。
私が牢から出られる理由なんて、一つしかないって言うのに…。
看守の足音が、もうすぐ私の牢の前で止まる。
カツン…カツン…
カツン………
錆びた鉄格子のドアに、ジャラジャラと音を鳴らす鍵の束から一つの鍵が差し込まれた。
錠の外れる音が、地下牢全体に響いた。
キィ…
鉄が軋む嫌な音と共に、ドアが開いた。
看守
「4-82番、出ろ」
私は目を開き、顔を上げ、看守を見た。
いつもここへ来る看守ではなかった。
言われた通りに、すぐに立ち上がり、看守のもとへ歩いて行った。
私が牢の外に出ても、看守は私を捕まえない。
もう、逃げ出す力もないことを知っているのだ。
そして看守は静かに、毅然とした態度で私に告げた。
看守
「死刑執行だ」
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