幸福

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長く冷たいコンクリート固めの廊下を、看守の後について歩く。 こんなに長い距離を歩くのは久々だから、足がふらつく。 看守の足が異常に速く感じる…。 彼は普通のスピードで歩いているのだろうが、私は少し小走りをしなくては追いつけない。 ふいに私はバランスを崩した。 石畳に躓いたらしい。 ドシャっという倒れる音に気付いて、看守が立ち止まり、振り返った。 しかし助け起こそうとはしない。 ゴミでも見るような目で、私を見下している。 私がどうしても立てないでいると、面倒くさそうに、汚いものを触るように乱暴に私を立ち上がらせた。 怪訝な顔をして再び歩き出す。 私はまた小走りでついていく。 そして階段に差し掛かり、私は足を止めた。 もう…足が上がらない。 息が上がって、上を見上げるだけで疲労が増しそうだ。 もう少しで…外に出られるって言うのに…。 動けないでいる私を見かねて、看守が引き返してきた。 どうするつもりだろうと、じっと立っていると、いきなり髪を掴まれた。 そのまま無理矢理引きずられる。 足を動かさなくては、本当に髪だけで引きずりあげていくつもりだろう。 私は必死になって階段を上った。 大して長くもない階段が、やけに長く高く感じた。 階段を上がりきると、看守は床に私ごと放り投げるように髪を離した。 右の頬を少し打ちつけた。熱を持ち始めてじんじんと痛む。 だけど、こんなもの痛いうちには入らない。 これより酷いことは、散々されてきたんだ。 私はなんとか立ち上がり、フンッと鼻を鳴らして歩き出した看守をまた追いかける。 あぁ…地下から少し出ただけなのに、建物の中でも明るい。 自然光が小さな窓から差し込んでいる。 空気も澄んでいる。 私はやっと、世界に会える…。  
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