幸福

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重たそうな木の扉の前に来た。 2人の軍人が開閉の管理をしているらしい。 看守 「4-82の死刑執行だ。道をあけてくれ。」 看守の言葉に、2人の軍人が木の扉をゆっくりと開けた。 扉の隙間から、少しずつ…少しずつ…まばゆい光が射し込んでくる。 裸電球とは比べものにならないほどの光が、何年ぶりかに、私の目の前に広がる。 眩しすぎて目を開けていられない。 あぁ…世界はこんなにも明るかったのか…。 私はこんなに明るい世界に居たのか。 ガコンッという音と共に扉が開ききった。 まだ眩しくて目を開けられない私を、容赦なく看守は引っ張って行く。 次第に目が光に慣れてきて、まともに景色を見られるようになった。 私はただ…茫然とその光景を見ることしか出来なかった。 私の目の前には、ずいぶん昔に兄とよく遊んだ広場がある。 ただ…今私に聞こえるのは、楽しそうに遊びまわる子どもの声ではなく…… 公開処刑を見に来た民衆のざわめき。 この街の人間のほとんどが、この広場に集まっているのではないだろうか。 広場が人間で埋め尽くされている。 そして、民衆が取り囲んでいるのは、木製の死刑台。 死刑台と言っても、ギロチンや先が輪になったロープはない。 本当に"台"だけである。 民衆は私の姿を確認するや否や、ワッと声が上がった。 反逆者の娘だ 非国民だ 汚れた女だ 罵声という罵声が、私に降りかかる。 本当のことだ。 なんら苦ではない。 さぁ、国を過信する猿ども…私の死に様を目に焼き付けろ。  
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