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(まさか…本当に?)
亀はそんな考えなど気にせずに首を振っている。
志郎はちらりと周りを見回し、誰もいないことを確認してから砂浜にまた戻った。
亀の前まで来た時、亀が首を振るのをやめた。
そして、亀は小さい声で鳴いた。
(……なんだ?)
頭に響くその鳴き声に、志郎は少しだけふらついた。
「アリガトウ」
志郎は周りをまた見回した。
高い声でお礼を言われた気がした。
「アリガトウ、ヒトノコヨ」
志郎は目を背けるのをやめ、寒気が走る体を押さえ付けながら亀を見つめた。
ヒトノコ、つまり人の子、とは自分以外にはいない。
そして周りには亀しかいない。
(…やっぱり、こいつが?)
思う志郎に亀は口をぱくぱくさせながら続けた。
「キミヲ、リュウグウジョウニ、ショウタイシヨウ」
単刀直入に言う亀。
志郎は恐れることも怪しむこともなく、ニヤリと笑って頷いた。
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