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「サア、ツキマシタゾ」
亀は前とまったく変わらないように言う。
変わってしまっていたのは、風景だった。
海はそのままだ。
だが車が空を飛び、ロボットが歩き回り、人は機械を身にまとっている。
竜宮城にいた月日、こちらではすさまじいスピードで時が流れていたのだ。
「マタアイマショウゾ、シロウドノ」
亀が告げて、海へ戻っていく。
その声が、少しだけ哀れんでいたように聞こえたのは志郎の気のせいだっただろうか。
ふらふらと、町へ足を向ける志郎。
すれ違う人々はまるで違う格好の志郎に怪訝な目を向けていく。
志郎は町を周り、何か知っているものはないか探した。
行きつけのコンビニ、友達と遊んだゲームセンター、通っていた学校。
そして、家も。
すべてが、志郎の知っているものではなかった。
現実は、志郎だけを残して様変わりしてしまっていた。
退屈だと、何故自分は思ったのだろうか。
知らず、志郎は考えていた。
退屈だと思えるのは幸せだと、何故気付けなかったのだろうか。
知らず、志郎は震えていた。
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