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「そんなことよりも…」
「二人の正体は誰にも口外するな、デショ?」
ハティさんの台詞を遮ってティアさんはクスクス笑いながら言った。
「……」
無言のハティさんを見てティアさんはにんまりと笑う。
「もちろん言わないヨ。俺も正体ばれちゃったし。それを黙っててくれるならねェ」
性別不明年齢不詳謎の天才博士のがカッコイイデショ?
とティアさんはくるくると自分の座っている椅子を回しながら言った。
「…いいだろう。取引だな。」
ハティさんは腕を組んで答える。
するとティアさんはピタッと動きを止めその分厚い眼鏡の奥の目を細めて笑った。
「君達のルール。依頼人に対して、この相談所と関わって知った事、見た事は全て口外してはならない。そのルールは、自分達が人間では無い事を世の中にばれないようにするため。…やっぱりそうなんだネ。」
「…だったら何だ。」
クスクスと笑うティアさんを睨んでハティさんはイラついたような声音で言った。
「でも今の時代、妖怪の存在なんてだーれも信じない。もしばれて、その人が誰かに話したとしても『そんな事あるわけないでしょ。』って笑われるのがオチ。俺も君達を最初に見た時は自分で自分を笑ったからネ。」
正直、ティアさんが何を言いたいのかわからなかった。
ハティさんも同じ気持ちなのか、無言のままだ。
ティアさんは続けた。
「それに何より、君の性格なら人間じゃないってばれようがどうでも良いハズ。
なら何でルールなんて面倒なモノを作ったのか。」
どういう事だろう?
僕はルールを作ったのはただたんに正体を隠す為と聞いていた。
他に理由があるというのか。
「余計な詮索しないほうが身の為だ。」
「職業柄ー…好奇心旺盛でネ。」
重い空気の中、沈黙が続く。
と、突然。嫌な空気のせいでいたたまれなくなっていた僕の後ろ襟をハティさんはガシッと掴んでティアさんに背を向けて歩き出した。
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