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「いたっ!?は、ハティさん!引きずらなくても歩けますよ!」
後ろ襟を掴まれたまま引きずられる僕の嘆きはやはり無視され、ハティさんは無言のまま歩く。
どこかイラついているような感じだ。
「…見付かるのをオソレテル?」
ポソッと言ったティアさんの台詞に、ハティさんは足を止めた。
出口の扉の前でハティさんは後ろを向き、ティアさんを睨む。
「詮索はするなと言った。」
「ただの憶測で独り言だヨ。なーんの根拠もナイ。そう、ただの戯言。」
ニヤニヤ笑い、ティアさんは面白そうに言う。
しばらく無言でティアさんを睨んでいたハティさんは扉のノブに手をかけた。
「貴様には関係無い。」
そう言うと、ハティさんは僕を引きずってコンピュータールームを後にした。
「相談所のほうは明日にでも完成するからそれまで待っててねェ~!」
コンピュータルームからティアさんの声が聞こえた。
それも聞こえないかのようにハティさんは無言で歩き、研究所を出た。
何を考えているのか、とか、ルールの理由は本当に『正体を隠すため』なのか、とか。
疑問はたくさんあった。
でも僕はその後も、ずっとそれをハティさんに聞く事は無かった。
聞いたところでハティさんが素直に答えてくれるわけないし、何より、
ハティさんが言いたくない事を無理に聞くのは嫌だった。
………考えるのは止めよう。
とりあえず今のところは、明日相談所の修理が終わるまでどうするか考えないと。
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