幸運の鍵

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男性がポケットから取り出したのは、一本の鍵だった。 金色に輝く鍵は10センチほどの長さがあり、手に持つ部分がリング状になっている。鍵穴に差し込む部分には2つの突起がついていた。 閉ざされた洋館が舞台となるミステリー小説で、執事や管理人が持つ大きなリングに、いくつもの鍵がジャラジャラとついていることがある。男性が持っている鍵は、まさにそんな感じの古い洋式の鍵だった。 「どうです?興味をそそられる鍵でしょう?」 「なんの鍵です?」 こんな男性に構わずさっさと行けばよいものの、私の足は地面に吸い付けられたように動かない。というのも、ほんの少しの好奇心が、私を縛り付けて離さないからだ。 「これはただの鍵ではありません。持ち主に幸運をもたらす鍵なのです。あなたは現金を望みました。この鍵を用いれば、あなたは何の苦労もなく5千万円を手にすることができます。」 「ご、五千万…?ハハ、冗談でしょう。そんなうまい話があるわけがない。それとも、その鍵を50万で買えと言うんですか?」 「いえいえ!無償で差し上げますよ。あと、鍵だけでは効力がありません。鍵を使う対象が必要となります。」 今度はコートの左ポケットをまさぐりながら、男性が再び何かを取り出した。
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