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「この幸運の鍵を使うと、あなたは5千万円を手にする。しかし、その代わりに、誰かが不運に見舞われます。」
「不運?」
「そうです。幸運と不運は常に紙一重。誰かが馬券で大当たりを出した裏には、必ず賭け金を失って泣いている人がいるのです。」
男性のたとえに私はムッとした。その不運な者とは私のことだ。
「本当にこの鍵で宝箱を開ければ、5千万手に入るんだろうな!?」
そう確認しつつ、私は男性の言うことをまったく信用していなかった。
「ええ。保証します。何なら今ここで開けていただいても結構ですよ。」
男性があまりに自信をもって答えるので、私の頭に一つの疑念が浮かんだ。この場ですぐ宝箱を開けるのは賢明ではないのではないか。もし、それが男性の思うつぼだとしたら……
「君はこれを私にプレゼントしてくれた。ということは、私は自分が好きなときに箱を開けることができるんだな?」
「ええ。いつでもあなたが好きなときに。しかし、あなたにもたらされた幸運が、誰かの不運となることをお忘れなく。」
「分かったよ。どうもありがとう。まさか私がクリスマス・プレゼントをもらえるとは思っていませんでしたよ。」
「お役に立てて光栄です。私のことはルーニーと覚えておいていただければ結構です。では、ほかにも私を必要としている方がいますので、私はこれで失礼します。」
男性はそれだけ言い残し、私の横を通り過ぎて通りの向こうへと歩き去った。
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