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私はルーニーからもらった鍵をポケットに突っ込み、宝箱を手に持つと、駅から徒歩20分ほどの場所にある自宅アパートへと向かった。
アパートは建てられてから30年近くが経過しており、白く塗られた壁ははげて灰色にくすみ、水まわりのトラブルは日常茶飯事だ。そんな古いアパートに住んでいる理由はただ一つ。家賃が月7万円と、都内に建つ物件としては安いほうだからだ。しかし、最近はその家賃を支払うのにも困っている。
錆びた手すりのついた階段をあがり、203号室の鍵を取り出すためにポケットを探る。
何の変哲もない部屋の鍵を取り出すと、ノブの鍵穴に差し込んでドアを開けた。
「は~あ、これが高級マンションの鍵だったらな。」
部屋に入ると、私は玄関の下駄箱の上に部屋の鍵を放り、テレビのある居間へ行った。
机に宝箱と幸運の鍵を置き、あらためてじっくりと観察する。
金色の鍵は古めかしいにも関わらず美しい光沢を放っていて、見ているだけで嫌なことをしばし忘れさせてくれた。
セットになっている宝箱も、サイズが小さいとはいえ造りが凝っていて、眠っていた子供の頃の冒険心や想像力をかき立てる。
しばらく何も考えずに鍵と宝箱をぼんやりと眺めていたが、不意に鳴ったチャイムの音で一気に現実に引き戻された。
「あいつか……」
面倒くさいと思いつつ、私は重い腰をあげる。
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