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俺はついていない。
人なら一度は思ってしまう決まり文句。
主に自分に不利益な事態に陥ってしまった時に言う言葉だが、俺は最近の若者達はこの言葉を簡単に使いすぎていると思う。
たかがジャンケンで負けたぐらいで使う奴もいるし、数千円賭けで負けたから使う奴もいる。
たかが賭けに負けたからって、どいつもこいつも「ついてねぇ」、「ついてねぇ」。
はっ。バカじゃねぇの?
桜並木に心浮き立つ春となり、俺は晴れて高校に入学した。
そして今日はその入学式。
普通の学生なら胸を躍らせ、これから始まる高校生活云々とやらに期待するところだろう。
だが、俺は違った。
高校なんてどうでもいい。
朝起きるだけでも億劫。
何をするにしても、全てがダルく感じる。
「蓮ー! 早く起きねえと遅刻すっぞー!」
野太い声が一つ下の階から聞こえてくる。
相変わらず父の声はでかく無駄に威厳がある。
俺はのそのそとベッドから這い出て、瞼を閉じたまま階段を下りた。
そして俺の最悪の1日がまた幕を上げる……
ツルッ
「うげっ!」
ドドドドドドッ!
ぎゃあああああっ!!!
か、階段から転げ落ちた!?
ってかマジでいてぇ!
地震でも起きたような音を聞きつけて、台所からあごに生えたモジャ髭が特徴的な男が慌てて駆けつけてきた。
「ど、どうした蓮!?」
ま、俺の父親なんですけどね。
「どうしたもこうしたもねぇよ…見てわかんねぇかジジィ」
俺の父親、源次郎はしばらく俺を見据えた。
「……なんだ蓮、バナナの皮なんて持って。ちゃんとゴミ箱に捨てなきゃいかんだろ」
「親父はバカか!? 俺が頭にタンコブ作って、手にバナナの皮持ってたら考えられる答えは一つだろうが!」
俺は犬のようにくわっと怒鳴る。
親父はそれを聞いて納得したようにかんらかんらと笑った。
「はっはっは! なんだ、またやったんだな? 今時バナナの皮を踏んで転ぶ奴なんかそうそういないだろ!」
ブチッと俺の頭のなんらかが千切れ、バナナの皮を親父の顔に投げつけた。
バナナの皮は親父の顔にへばりつき、なんかキモいことになった。
「この家でバナナ食うのはテメェしかいねぇだろうが! なに他人面してわっはっはと笑ってんだよ!」
「バナナ食うのは俺だが、バナナの皮を落としたのが俺だという証拠はないだろうが」
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