第1章 ミッドウエイ海戦

2/31

453人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
「司令……司令……!」 田代孝(たしろ たかし)副司令の声で、清水は目を覚ました。ユラリ、と艦が上下に揺れている。 「何が、あったんだ……?」 どこかにぶつけたのか、ずきんずきんと痛む頭を押さえながら、清水は立ち上がった。平衡感覚が失われているのか、フラフラと身体が揺れる。 「分かりません」 清水の巨体を支えながら、田代が答える。 艦橋の前面を囲んでいる窓の外は、深い霧に包まれていた。闇に溶け込む霧は、どこか幻想的な雰囲気を醸し出していた。 その上に掛かっている時計に清水は視線を移した。午後10時21分を指している。 「司令。取り敢えず、CIC(戦闘情報センター)へ」 田代に施され、清水が立ち上がった時だった。突然、スピーカーから声が響いた。 『レーダーに反応! 我が艦隊の周囲を取り囲む艦影があります!』 ざわり、と艦橋のクルーが騒ぎ出した。バタバタと足音を響かせながら、舟田洋介(ふなだ ようすけ)航海長が、外に出た。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

453人が本棚に入れています
本棚に追加