余命三日

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感情が爆発する。押さえきれない。取り乱すな、取り乱すな、取り乱すな、落ち着け、泣くな、格好悪い、落ち着け。 「死はいつだって平等じゃないです」 およそ、想定していた答えと正反対な事を言いながら八夜は震えを押さえようと必死に肩を抑える俺の手に、自分の手を重ねながら耳元で囁いた。 「麻野君よりも、とても小さな男の子を迎えに行った時、自分の命と引き替えに我が子を産み落とした母親を迎えに行った時、私はいつだって神の不平等さを感じずにはいられない」 「私は人が死ぬ運命を変える事は出来ません。それでも、何か死ぬ前に、その誰かの力になりたくて私はここにいるんです」 「だからね、取り敢えず今は泣いてもいいと思います」 後から後から止めどなく、涙が溢れ落ちる。言葉にならない声が叫びとなって部屋にこだまする。隣近所に聞こえるんじゃないかと思う程の泣き声だったが、大丈夫と八夜は言った。 この部屋から音が漏れないように防音膜を張ったのだという。早速、一つ力になれたと元同級生の死神は微かに笑った。
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