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私が頷いたのを確認すると、陽介先生は全体に向かって次の指示を出した。 「では、2周目は息継ぎの練習をしながら歩きましょう。」 これもいつものメニューみたいで、みんな迷うことなく歩き始める。息継ぎのフォームを確認しながら歩く、ということらしい。顔を水につけ、腕を回して時々息継ぎのために顔をあげている。分からないながらに、なんとなく前の人の真似をしながら歩いてみる。すると、頭の上に大きな手を感じた。ぽんぽん、と頭を叩かれて、私は顔をあげる。 「祥子ちゃん、正面から顔を上げたら沈んじゃうよ。後ろを振り向くようにあごから上げるんだ。」 片手で私の頭を掴んだまま、顔の向きを変えさせる。私の頭なんて片手で掴めてしまう程大きな手。
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