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確かに、これでも息は吸える。でも、顔は水面に浸かったまま。やっぱり、水を飲み込みそうで怖い。大きな手が私の頭から離れる。
「この角度、忘れないでね。」
そう言うとそのまま他の生徒さんのところに行ってしまった。
それから、けのび、ばた足の練習をし終えた。次はクロールの練習です、と陽介先生は言った。
「みなさんのペースで構いませんからクロールで泳いでみましょう。まず、見本を見せますから、見てて下さいね。」
ゴーグルをはめ、まっすぐ前を見つめる。そして、ゆっくりと頭を沈め、両腕を伸ばして、壁を蹴る。ただ壁を蹴っただけなのに、みるみる陽介先生の背中が遠くなる。10メートル以上進んで、やっと水面まで浮き上がり、ばた足をする。ゆっくり手で水を掻く。ただ、純粋に、綺麗だった。水から手を引き上げる時も、その腕を頭上で回す時も。ほとんど波を立てず、でも力強くぐいぐい進む。うらやましい。あんな風に泳げたなら、どんなに気持ちいいだろう。向こう側でターンをして、あっと言う間に陽介先生はこちらまで戻ってきた。
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