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プロローグ
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夜の静寂、それは一種の芸術である。
世界を月光が妖しく照らし、人だけでなく動物までもが、その姿を消す。
あらゆる生物が眠る。
その様はまるで大自然が織り成す、壮大な絵画と言えるだろう。
しかし、すぐにその絵画は姿を変え、夜の住人達が姿を表す。
コウモリやフクロウなどの夜行性の動物ではない。
人でも、動物でもない『彼等』。
この日も月を仰ぎ、愛しそうに見つめる者が一人。
見た目は人間、だが漂う雰囲気が『彼』は人間でないと警告していた。
「……良い、月だ」
『彼』は呟く。
謡うように、あるいは吐き捨てるように。
続けて『彼』は呟く。
「このような日は、血がよく似合う……フフッ」
そういった『彼』は笑みを浮かべた。
口を裂いたかのような不気味な笑みを……。
血のような紅い瞳には、黄金に輝く月のみがただ美しく映っていた。
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