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「しょうがないなぁ……ロウ、後でご褒美頂戴ね」
願いが通じたのか、腕の中の少女は至って軽い口調で言った。
緊張感の欠片もないが、どうやらやる気を出したようだ。
絶望で染められた青年の表情が、希望のそれへと変わる。
直後、獣の身体が宙を舞う。
三メートルもの巨体が、だ。
飛んだ獣の身体は、古くなった天井に激突し、青年達から数メートル先の地面へと墜ちた。
コンクリート製の地面に叩きつけられた獣が、激痛にのたうち回る。 青年はその様子を見て肩を撫で下ろし、ため息混じりに呟く。
「もうちょっと早く動いてよ“ランス”、心臓止まるかと思ったよ」
拳を突き上げるような態勢で少女は、言葉を返す。
「疲れるのやなんだもん」
青年は少女を腕から解放し、自由の身とする。
音も出さず彼女は着地すると、青年を振り返り、期待に満ちた声で言う。
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