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少女は身を屈め、獣の突進を回避、ガラ空きになった腹部を切り裂いたのだ。
獣が床に落ち、命無き肉の塊と化す。
獣の腹は刃物で斬られたような傷が付いているが、少女は刃物を所持してはいない。
どう斬ったのだろうか?
「あぁぁぁぁぁぁぁ!! お気に入りの服が!?」
不意に、少女の悲鳴が轟いた。 獣の死体など気にもともない様子。
あるいは最初から何も思ってはなかったのかも知れない。
切断部の腹の下に居たからか、少女は血の雨を浴び、全身血まみれになってしまっていた。
「だから動くの嫌だったのにぃぃ! ロウの馬鹿ァ」
「ちょ、待ってランステッドさん? ランステッドさ……アアアァァァァ」
誰もいない廃墟の中に、可愛らしい少女の叫び声と、青年の悲痛な叫びが林中に響き渡った。
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