プロローグ

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+ 「ひ……酷い目にあった」  泣きそうな声を出す黒スーツの青年。  今は、上に羽織るブレザーは、隣を歩く少女に着せているので、真新しいワイシャツが闇の中で映えていた。   「ふんだ、ロウが悪いもんね」  ブレザーで、血に染まった服を隠しているらしい少女は、ツンとした表情でそっぽを向いてしまった。 「そんなぁ……」  ロウと呼ばれたこの気弱な青年、名を『ロウレニス=レンフィールド』と言う。  信じられないかもしれないが、個人経営の探偵である。  と、いっても名ばかりで、殺人事件に遭遇したこともなければ、盗みの現場にも遭遇していない。  代わりにくるのは毎回ペットの捜索願いで、それが彼の主収入となっている。  ペット探しなど、一回に少ない賃金しかもらえずに、現在ジリ貧街道まっしぐらな生活を送っている。  その隣の赤毛の少女はランス。  ランステッド=シェル=アルナカルタという。  実の所、彼女は人間ではない。  『昏きもの』と呼ばれる異形の者である。  こういうとピンと来ないだろうが、俗に言う『吸血鬼』のコトだったりする。  十字架に弱く、水に弱く、日光に弱く、にんにくに弱い、そんなイメージがあるだろう。
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