プロローグ

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 だが、ランステッドを見る限り、それは間違いだとわかる。  ロウレニスいわく、『にんにく料理大好きだし、夏にプール行って遊んだコトもあるし、十字架だって普通に装飾品として着けてる』そうだ。  彼女が吸血鬼だと知ったとき、ロウは恐怖感じるよりガッカリしたという。  自分の幻想(ゆめ)が壊された気分だったと、彼は語る。  実質、『昏きもの』と言っても、人とあまり変わらない。  変わっているのは、強大な『力』を除けば、人には有り得ぬ紅い瞳、血を吸うコトくらいだ。  『血を吸う』という行為に嫌悪感を感じる人もいるかもしれないが、 『昏きもの』は、血を吸うため、無差別に人を襲ったりはしない。  それは多量に血液を求めていないという理由と、もう一つ理由がある。    血は彼等にとって、『食事』そのものだが、血というものは、個々によって微妙に成分が異なり、その微妙な差異が、摂取できる養分を変化させている。  そこで無差別に血を飲むことは、養分を偏った形で摂取することになってしまう。  いわゆる『偏食』である。
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