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初めて来た家なら誰もが
やってしまうだろう。
八住はキョロキョロと珍しそうに部屋の中を見回しながら、奥へと進んで行った。
「突然、ごめん。ビックリさせようと思ってて…へぇ、綺麗に片付いてるね」
それは、今
掃除をしていたからで…
良かった、掃除しておいて。
「ホント、ビックリした。ちょうど連絡しようとしていた所だったから余計にね」
八住にソファに座るように促したが、座ろうとしない。
両手の荷物も持ったままだ。
「八住君、荷物置けば?何を持って来たの?」
「ああ!そう、お昼。もうじきお昼だなと思って途中のスーパーで材料を買ってきたんだ」
ニコッと笑うと、荷物を少し持ち上げた。
「なぁに~作ってくれるの?」
「はい」
返事をしながら、我が家の狭いキッチンへと八住は移動して行った。
ヤバイ…嬉しいかも。
袋の中に詰められた材料を一つ一つ楽しそうに出す姿を、こちらも楽しく見ていた。
そして、あることに気付く。
「やや八住君、これから作るお昼ご飯って…もしかして」
嫌な予感がする。
身体中から変な汗が
流れてくる。
どうか、当たりませんように!
「カレーライスだよ。店で作ってるようにはいかないけど、美味しく作るから」
当たりだし!
まさか、ここにきて
カレーライスとは……
この前は何とか逃げられたけど今日は自分の家だし、どうしよう!?
『さっき食べたばかりでお腹いっぱいだから~』とか言って回避しようかな。
うん、そうしよう。
しかし、口を開きかけた時に
私のお腹が盛大に
ググゥ――ッ!
と、鳴った。
恥ずかしいやら、呆れるやら…ますます断れないよ!
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