間違える

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八住が感じた事は 当たらずも遠からずだ。 死ぬまでは考えなかったが、似たような気分だったのは間違いない。 人があまり近寄らない 冬の海。 一直線に海に近付く姿があったら、もしかして…と思っても仕方がない。 「頭上げて下さい、怒ってなんかいませんから…誤解をしてしまう行動をとった私がいけないんです。気にしないで下さい」 八住に笑顔を向け、いれたての二杯目のホットミルクに口をつけた。 「…すみません。そうだ、片岡さんお腹減ってませんか?」 ころころ変わる八住の表情は 私までも同じ気持ちにさせる。 さっきまでの疲れた私がいつの間にかいなくなっている。海ではなくて八住に癒されているのかも? 「そうねぇ…何も食べてないから減ったかも。忘れてたわ…お腹が減ってること」 「そうですか。じゃあ食べて欲しい料理があるんですけど…俺の自信作で、これだけはマスターも作らせてくれるんですよ」 『本当は、今マスターが出掛けてて、これだけしか作れないんですけどね』と可愛く舌を出した。 小さい子供が嬉しい気持ちを表すようにめいいっぱいの笑顔を見せる。 カウンターの奥に八住は引っ込んで行く。料理などを作る厨房があるみたいだ。 暫くすると、料理の正体がわかる香りが店内に漂い始めた。 「…まさか」 間違えるはずのない この香りの正体は―― .
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