間違える

6/11
前へ
/86ページ
次へ
二階の八住の部屋に 通して貰った。 初対面の男の部屋にのこのこと入っていく私ってどうなの?と軽く落ち込んだ。 八住の部屋は六畳一間で何もなく殺風景だった。 窓際にシングルベットが置かれ小さな本棚があるだけだ。 本棚はいろんなジャンルの本がびっしりと並び、棚の横にも積み上がっていた。 テレビがないから、主に読書をして空いた時間を過ごしているみたいだ。 「ベット使って下さい。今、薬を用意しますから」 掛け布団をめくり、敷布団をポンポンと叩いた。ここに寝てと言っているようだ。 「ありがとう…お言葉に甘えます」 のそのそと布団に潜り込み 目を閉じた。 「下にいます。何かあったら呼んで下さい。薬は枕元に置いておきます……おやすみなさい」 八住の穏やかな口調と、微かに聞こえる波の音が心地よい。 あまり優しくしないで 欲しいなぁ… あの一人の部屋に帰りたくなくなってくる。 せっかく癒された心も また元に戻っていく気がする。 八住が一階へと下りて行く 音が聞こえる… 人が居るという音がこんなにも安らぎを与えるのかと、今更ながら気付いたのだった。 .
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11443人が本棚に入れています
本棚に追加