ぼく、シフォン。

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スタッフの人がぼくを抱っこして、その人の所まで連れてってくれた。 ぼくは…ドキドキして、緊張して、早く、早く抱っこして欲しいって、その人に両手両足を伸ばしたんだ。 その人は“元気ですね”って笑ってぼくを抱いてくれた。 その抱き方が素人じゃなくて、ぼくは安心して全身を任せたんだ。 その時その人が、ぼくの鼻にキスをしてくれた。 ぼくは嬉しくて嬉しくて…両手をバタバタさせて喜んだんだ! そしたら、ぼくの長い爪が、その人の唇を引っ掻いてしまった…! ペットショップに居る僕達の爪は、飼われていく時、爪切りとかを飼い主さんに教える為に、伸ばしっぱなしにしてあるんだ。 …どうしようって思った。 スタッフさんは慌てて、消毒薬とティッシュをその人に渡してた。 その人は滲む血を押さえ… ぼくは…またガラスケースに入れられた。 もう駄目だって思った。 せっかくぼくの事を気に入ってくれていたのに、 興奮した僕は一体何をしちゃったんだろう… ぼくは興奮すると周りが見えなくなる性格で、 良く言えば元気で楽天的。 悪く言えば落ち着きが無い。 それは今も変わってないけど… この時は本当にもう駄目だって思ったんだ。 ガラス越しに、ごめんなさいごめんなさいってその人に謝って… またその人の顔が見れなくなってしまった。 またチャンスを自分で潰したって思った。 悔しくて情けなくて、ぼくは本当に馬鹿だって… そんな時声が聞こえた。 “全然大丈夫です。元気が良くて良いですね。可愛いいし、この子下さい。”
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