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男が前に視たのは、男が11歳の時
まだ刀など持ったこともない未熟な少年だったころ、蜻蛉(カゲロウ)と呼ばれる盗賊に襲われた
少年の母親は少年を守るために、蜻蛉に背中からザックリと斬られたのだった
『母上ぇぇええ!!!!!』
『に…げて……アナタは…生きな、けれ…ば…だ…め……』
少年の母親は少年を真っ赤に染めたまま、しかしまだ母として子を護るために少年の上に重なる状態で事切れた
『はは、うえッ…』
涙がボロボロとこぼれ落ちている少年の近くに、少年の母を殺したであろう男が近付いてくる
『お前は人買いに高値で売れそうだなァ…』
『いやッ…ぁ…あッ…』
少年は恐怖で声がでなくなる
自分は人買いに売られる?一生こき使われて生きていかなければならない?そのまま殺される…?そんなことを考えていると、突然近付いてきていた男が笑みを浮かべたまま凍り付いたように固まった
少年は訳が分からなかったが、突然生暖かい水が降り注いだ
『雨…?』
だが手で触れたそれはぬるりとし、雨ではないことは容易に確認できた
不意に男が腰を境目にずるりと上半身が落ちる
その背後には蜻蛉の一味は1人も残ってはいなかった
ただ1人、白の男を除いては…
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