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目が覚めた。窓からは冬の冷たい風が朝の喧騒を拐い、部屋にその残滓を運ぶ。
何だかとても寝苦しかった。
いつも通り立ち上がろうと自分の上にかかる毛布をまくりあげようとしたとき、異変に気付いた。
袖がだぼついているのである。
普段なら手首が出てしまう(つまりちょっと小さい)のだが今日は全く正反対なのである。
袖は手を覆い隠しその上少しあまりがある。ドキリとして急いでまくりあげた毛布の下のズボンも似たような状況にあった。
慌てて立ち上がる。
しかし、慌て過ぎたせいで裾を踏みつけてどべしと転んでしまった。
「っ痛…――っ!」
漏れ出た声は高く、幼かった。
立ち上がり、鏡を見る。
メガネ無しでも景色ははっきりと見えた。
「何でよりによって…この……」
そう、呟いた。
――彼の外見は「あの日」の年齢にもどっていたのだった。
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