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こういう生活が、当たり前だと思っていた。
みんなそうやって、毎日過ごしていると思った。
父親が死んで、母親の負担は減った。
遠い病院に通わなくてよくなったから。
遊んでもらえると思った。
だから、私は葬式でも泣かなかった。
6才の時だ。
ほとんど入院生活をしていた父親は、私の記憶には残っていない。
悲しくなかった。
冷めていたのかな。
みんな泣いているのが不思議だった。
8才年上の兄が泣いているのを初めて見た。
姉達も泣いていた。
母親も泣いていた。
泣いていないのは、私だけだった。
バタバタと忙しそうだったので、外で兄とキャッチボールをやっていた。
泣きながらやっていた兄を、不思議そうに見ていた。
父親が骨だけになった。
正直その骨を拾うのが怖かった。
手が震えて何度も落とした。
母親が一緒に摘んでくれた。
久しぶりに触れた母親の手が嬉しかった。
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