-ランドセル-

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父親の記憶がないと書いたが唯一、1つだけある。 まだ入院する前の事だから、私は1才か2才の頃だと思う。 夜泣きをしたんぢゃないかな。 父親は、物凄い神経質で、帳簿を付けている時は無音でないと嫌だったらしい。 そんな時に、私の夜泣き。 凄い形相をした父親に殴られ蹴られた。 音で気づいた母親が、私に覆い被さって守ってくれた。 痛いとか怖いとかの感情なんて、まだなかった。 その父親の顔が私が覚えている最後の顔だ。 その後すぐ入院したので、普通の顔なんて全く覚えていない。 なんとなく、可哀想に思う。 娘にそんな顔しか残せなかった父親を。
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