第一声

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意味がわからなかった。 途端に僕も苛立ちが湧き出てきた。 「は。なんでてめぇにそんなこと言われなきゃなんねーんだよ。」 僕は大志の胸ぐらをつかみ、その後すぐに突き放した。 僕らのやりとりを見る傍観者達の中に佐々木なぎさ(ささきなぎさ)がいるのを見つけたからだ。 佐々木なぎさは僕と同じクラスで、新学期当時、名前が近いことから出席番号で僕の後ろに座っていた彼女と少しだけど話したことをきっかけに、僕は彼女に惚れていた。 「お前それでほんまにおもろいんか。」 杉村はその一言を僕に静かに吐き捨て、教室を出て行った。 胸に響くほど低く静かな声だった。
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