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ここはとある街並み。
どこにでもあるような…賑やかな商店街が並ぶ大通りにボクは来ていた。
ボクに名前はない。
姿は闇に溶けてしまいそうな――…全身真っ黒毛の…野良猫だった。
季節は冬なので、真っ暗になっていくのは早い。
人がまばらになってきたときに、ボクはこの商店街に来た。
もし大勢の人間がいたら厄介だからだ…。
しばらくその大通りを歩いてみて、何かないかキョロキョロと周りを見てみる。
もう夜になるので、あちこちのお店は閉まってきているな――…。
不意にそこに止まって、空を見上げた。
満月が…とても綺麗にボクを照らしてくれていた。
だけどあんなに綺麗に輝いている月が…憎く思えてしまう。
満月はボクを照らす。
光があれば…影ができる。
幸せなやつがいれば…
不幸なやつだっているんだ。
だったら――…光なんてなくなっちゃえばいいのに。
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