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「一!二!三!四!」
数十人の子供達の元気な声が、広い道場の中にこだまする。声を出すと同時に拳を突き出すその子供たちの顔は、皆爽やかな汗でキラキラしている。
「五!六!七!八!」
子供達は、日々高みを目指して拳法の修行をしているのだった。彼らの、彼女らの師のような優れた拳士になるために。
その師が、弟子である子供達に向かって言う。
「みんな、今日はここまでよ。当番は、しっかり片付けをしておくように。」
黄色い服を着た一人の女はそう言い、道場を出ようとする。弟子たちも各々帰りの支度をしたり、当番の者は片付けを始める。しかし、そのようにはせず、女を制する一人の弟子がいた。
「ラン姐さん!今日こそ手合せ願います!」
そう言ったのは、まだ高校生くらいだと思われる青年だ。周りの他の弟子たちは慣れすぎていて全くの無反応だった。
「いつまでその呼び方なの!?いい加減『マスター・ラン』と呼びなさい!」
ラン、そう呼ばれた女は呆れた口調で返した。
「釣れないな・・・じゃあなつめ先輩でいいや!」
そう言うと彼は颯爽と道場を抜け、隣接する高層ビルの中に入っていった。
「ハァ・・・まったくもう!」
ランも青年を追ってビルに駆け込む。
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