53人が本棚に入れています
本棚に追加
青年とランが飛び込んだのは、大手スポーツメーカー、スクラッチ。入り口にもある三本の爪を模したマークが印象的だ。
様々な製品開発を行っている大企業だが、彼らと何の関係があるのだろうか?何やら秘密がありそうだ。
その頃、そのスクラッチの特別開発室では、二人の男女が睨みあっていた。そこには張り詰めた空気が漂っている。
お互い苦しんでいるように見えるが、端から見ればただ睨みあっているようにしか見えない。それもそのはず、二人は凡人には見えない気を出して闘っているのだった。
その気の名は『激気』と言った。獣を心に感じ、獣の力を手にする拳法、『獣拳』の力の源である。実はこの激気の他にも、もう一種類、邪悪な気が獣拳には存在するのだが、今では二つは一つに還っており、かつての頭首によって幕を下ろされているので、今日の獣拳使いの気と言えば専ら激気の方を指す。
二人はお互いの激気を獣の形に練り上げ、精一杯の力を込めてぶつけあっている。
やがて青い服を着た男の方が膝をついた。それと同時に二人は気を発するのを止めた。
女の方は嬉しそうな顔で男に近づき、手を差し伸べる。
最初のコメントを投稿しよう!