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「でも、だからと言って人を食べさすなんて」
エイミーは理解しようとしてるようにダグラスには見えた。
「最初から人間を食べさすつもりはなかった。最初は村人同士が喧嘩をし死人が出た。警察に伝わると村は終わりになる。僕達は女神を守らなきゃいけない。女神を守るには村が必要なんだ。死体をどうやって処理する?」
ダグラスは理の通った嘘を口にしてる。その言葉は言ったそばから真実のように思えた。
誤魔化しではない。仕方ないからでもない。女神を守る為に。守る為にお金が必要だ。美味しい豚にする為に人間のエサが必要なんだ。
ダグラスは分かった。その屁理屈にすがるのではなく、本当にそうだったんだ。言葉に出して理解した。エイミーは黙ったままだったが、
「女神ってママの事?」
と呟いた。
「ママが女神。そして次の女神はエイミー。君だ」
ダグラスはうなづいてから言った。
「ママが言ったの?」
ダグラスは首を振った。
「ママを守る為に。そしてエイミーを守る為に」
「神様は許してくれるの?」
エイミーが唐突に質問を変えた。何かにすがりたいからだとダグラスは分かった。エイミーは自分を許したいのだ。仕方ない事だと言い聞かせたいのだ。
「もちろん許してくれるはずだよ。僕達は命を食べて生きてるのだから。豚も鳥も。野菜も人間も同じ命なんだ」
ダグラスは言ったが、エイミーは黙ってる。
「イヤになったかい?」
ダグラスは恐る恐る聞いた。もう解体はしたくない。その言葉を恐れた。
「生きるには仕事が必要で。私じゃなくても誰かがやるんでしょ?」
ダグラスは耳を疑った。諦めかけていたからだ。
「そ、そう。誰かがやらなくてはならない事なんだ。罪深い事なのは分かってる。本当ならば分かってる人がやらなくてはならない尊い仕事なんだ」
「一番罪深い仕事って何?」
エイミーは聞いた。ダグラスは答えは分かっていたが、二番目に罪深い仕事を言葉にした。
「豚を殺す事」
「私、次の仕事はそれやるわ」
エイミーは落としたナイフを拾うと再び豚を解体し始めた。
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