街での生活

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エイミーは、ダグラスの視線に目を向けた。そこには、ちぎれた指や、黒い髪の毛、骨が糞尿にまみれてた。 誰の? エイミーは最初に思った疑問。そして、記憶が蘇る。入ってはいけない小屋の事。そこに亡くなった人を運ぶのを見た事。豚を相手に村の人達が腰をぶつけ揺さぶっていた事。 そして、動かなくなった人間がミキサーの中に放り込まれ細切れになってく光景。 今まで忘れていた。覚えていたのは、その後の事だけ。ホセが後ろから、言った言葉。 「悪い事をしたらお仕置きしなくてはならない」 見てはいけない小屋の中を見た私もお仕置きされるのだ。と恐れた記憶。結局、お仕置きはされたのかは分からない。分からないのは、されなかったからだろう。もしくは、お仕置きされた記憶も忘れたのだろう。 過去を見たくなかったエイミーは、思いついた疑問をダグラスに投げる。ダグラスは私のせいだと言った。女神を守る為だと。 私はこの村が好き。誰もが優しくしてくれる。その為に豚を育て解体してるのも分かってる。ホセがいつも言う言葉の一つ。 「神様に感謝しなさい。優しくしてくれた人に感謝をし、返しなさい」 私は命を殺し生きている。誰もがそう。悪い事をしたらお仕置きされる。 優しくされたら恩返しをする。 お仕置きをしなきゃいけない。恩返しもしなきゃならない。 エイミーは言った。 「一番罪深い仕事って何?」 答えは分かっていた。 命を殺す事。
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