誰かが言っていた

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「あれっ?氷がねーや。…面倒臭いなぁ、ったく。」 部屋の冷蔵庫の氷がきれていた。水道水はマズイから、コンビニまで買いに行っているのだが、車を走らせる距離だ。すでに飲んでるし… ……まっいいか、警察なんていねーだろう。 そう思いキーを持って外に出た。 「まったくすんげぇ田舎だな。」 外に出て、まず目につくのは草っ原。右手に山。隣の家は、左に50㍍ほど離れて建っている。 建築資材などもあるため田舎のほうがいいらしい。土地も安い。 寮の玄関は会社の裏口。 同じ建物で背中合わせになっていた。 寮と会社の玄関を行き来する途中に、チコの犬小屋がある。 その奥からクーン、クーンと、小さな声が聞こえる。 足音を聞き、甘え声をだしているようだ。 僕は、この甘え声が無性に嫌だった。 『人間に媚びるんじゃねぇよ…』…と思ってしまう。 犬は目を見ると、必ず目をそらす。目だけキョロキョロと動かして、しまいには横目でこっちを見る。 猫は逆に人間を睨み返す。僕は、猫のそんなところが好きだ。人間に媚びてない気がするから。 なき声だけが聞こえる小屋の前を通りすぎ、車に向かおうとした時、後ろに嫌な気配を感じた。 ズルーッという音とともに… …なんだぁ? 振り返った僕が見たのは、小屋の入口から、顔だけを出しているチコだった。しかも顔だけが地ベタを這うように出ており、僕から見える左側の耳が真っ赤に腫れ上がっている……ように見えた。
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