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煉瓦色の肌
…ちょっと暗いな…、
そう思いながらチコに近付いた僕は、ドキリとして足を止めた。
顔の左半分の毛がない!
「どしたんだ!?お前!?」
なんとも気味の悪い光景だった。
薄暗い月明かりにぼんやりと照らされたチコは、苦しそうにこちらを見た。
よく見ると、左耳から頬にかけての毛がなくなり、全ての毛穴から血が滲み出ている。皮膚はどす黒く変色して腫れ上がり、まるでゲームに出てくるゾンビ犬のようだった。
「何だよ、これぇ!勘弁してくれよったく!トミー!!トミー、ちょっと来いよ!!」
僕は大声でトミーを呼んだ。
バタバタとトミーが走ってきて叫んだ。
「ワォ!ホワットゥ、ドゥーイング、鏡サン?!」
「バカ、俺はなんもしてねーよ!それより今週の当番は誰だ?」
「ビトサンデース。」
「呼んでこい。」
トミーは、またバタバタと戻って行った。
チコの世話は、三人が週変わりでやっていた。今週はビトの番らしい。チコの状態は昨日や今日のものではない。ビトだって気づいてたろう。
そういえば…、ここしばらくチコの姿を見てなかったなぁ。あんまり好きじゃないから気にもしてなかった。
「ナンデスカー?鏡サン。」
「ナンデスカーじゃねえよ、どうなってんだ?これ。」
「…!?オーゥッ、ヒッドーイ…」
「?ハァッ?初めて見たような言い方すんなよ。いつからこうなんだ?」
「ワカリマセーン…」
「??」
「ドシタデスカー?」
アーミーもやってきた。鳥の足をくわえながら。
「ビト、わからないってどういう事?チコのケアはユーだろう?」
「デスケレドデスガ…チコ、デテキマセーン。ア、アイキャンノット…」
シッ!と僕はビトの言葉を遮った。
タンタン、タンタンという音が小屋から聞こえる。小さくかぼそく…。
いつの間にかチコは、小屋の中へ姿を消していた。僕等は小屋を覗き込んだ。
チコは、小屋の一番奥で四肢を投げだし横たわっている。その左足が、弱々しく動き、床をたたいていた。
「何やってんだ?」
「メイビー、タブンカユイ。」
「痒い?」
「チコハァ、パワーナイデスカラァ、モウカケナイデスカラ」
「痒いだけ…か」
掻きたいけれどかけない、足だけが力なく宙を舞っていた。
「部屋…入ろう。明日社長に病院行ってもらう。」
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