プロローグ

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シズネは鎌の柄の末端の尖った部分で、地面に機械のような速さと正確さで魔方陣を描く。 「転移術式の展開完了。結界の解除完了。転移術式を発動します」 シズネの描いた魔方陣から光が溢れ隆斗とシズネを包み込み、その光が消えると同時に二人の姿も消えていた。 二人が再び現れたのは、あるマンションの屋上。 「転移完了。隆斗様、お疲れ様でした」 シズネはスカートの裾を摘んで、恭しくお辞儀をする。 それに対して隆斗は、やや困ったような顔をして、頭を掻く。 「もう、半年も前から言ってる気がするんだが、…その隆斗“様”ってのは直らないのか?」 「直りません。申し訳ありませんが」 即答で拒否し、わざわざ倒置法を使って謝ってくるので隆斗は溜め息をこぼす。 「まあ、今更言っても直せるとは期待してない。それよりも今回の戦闘で何か気付いた事は無いか?」 「はい、ビルのショーウィンドに展示されているウェディングドレスの値段が三割も割引きされてました」 「そうか、それは凄いな……、ってコラ」 シズネがいたって真面目な調子で言ったものだから隆斗はノリツッコミをしてしまったが、聞きたい事はそんな事では無い。
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