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屋上を後にし、俺はマンションのエレベーターを待つ。
「隆斗様、お一つよろしいですか?」
「何だ?」
「"斬魔"をしまわれなくてもよろしいのかと…」
シズネに事務的な口調で言われ、右手に持つ双剣に眼を移す。
双剣"斬魔"。頑丈な事と、その特異な形状しか取り柄が無い俺の愛剣、そして数少ない一族の形見。
「現在の時刻は11時25分。残業帰りの社会人と遭遇する確率は高くはありませんが、しまわれる事を提案いたします」
無表情なまま、機械みたいな理論的な物言いをするシズネ。
正直、聞いてると肩が痛くなるのだが、訂正をさせても聞かない。いや、そもそもこいつは間違った事を言ってないから、ここで口調を正させるのは筋違いだろう。
「お前の言う通りだな、すぐに片付ける」
言って、俺は頭の中で異空間を開くための術式を組み上げ、何も無い空間に斬魔を右腕ごと突っ込む。
すると、何も無い空間が揺めき、右腕と斬魔を飲み込む。
何か、固まりかけのゼリーの液体に手を突っ込んだ感触を感じつつ、そこに斬魔を置く。
俺が右手を引き抜いた時には、斬魔も空間の揺めきも消えていた。
今のは俺が使う数少ない魔術の一つ、"武器庫(俺が名付けた)"だ。
俺はよく知らないがシズネ達に言わせればかなりの高等な魔術であり、無詠唱で行使するのは異常らしい。
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