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「お願いだよ。プレスタの電源スイッチから指を離してくれ。ね、この通り」
少年は両手を合わせてお願いポーズをした。
「うーん、困りましたわね?どうしようかしら」
少女は電源スイッチから指を離さず反対の指をあごに載せて考え込む。
やがて、
「私の言うことを一つだけ聞いてくれるのでしたら離してもいいですわよ」
「…………わかった。なにをしたらいいの?」
「よろしい、私が貴方にやって欲しいことは……」
「やって欲しいことは?」
少年はごくりと生唾を飲み込んだ。
「や、やって欲しいことは……(ぽっ)」
「顔が出荷前のトマトみたいに赤いよ!」
少年はいきなりボッと赤く変わった顔の少女にたじろいた。
「うるさいですわね!いいからお聞きなさい!」
「怒鳴る意味が分からないよ!キレる十代?」
「やっぱり、いいですわ」
「え……なんで?途中で止めるとすごく気になるんだけど」
「そもそも、交渉する権利は私にはないんでした。というわけで、えいっ」
少女はスイッチをぽちっと押していた。
「あー!この人、本当に押したよ。まだセーブしてないのに」
「それではいきますわよ」
少女は少年の着ていたパジャマの首根っこを掴んで、ズルズルと引きずる。
「二日間の僕の苦労はなんだったんだ?…………き、き、君の鬼ー、悪魔ー、デコッパチっ」
「デコッパチですって」
デコッパチの言葉に少女は片目を吊り上げて睨みつける。
「ゴメンナサイ」
少年は拳を作っている少女に生命の危機を感じて瞬時に謝った。
「ま、聞かなかったことにしましょう。それよりもお母様の手料理が味わえるなんて……ふふふ、楽しみですわ」
少女はうっとりと嬉しそうに笑みをこぼしていた。
少年はひとり、腕を組んでつぶやいた。
「そんなにあの母さんの料理が食べたいのかな?」
そんなことを思って少年は少女に連れられていった。
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